従業員に対して「この人辞めてほしいなー」とか「解雇するしかない!」って思うこと、事業をやっているとたまにあると思います。で、もちろん会社にとって害が大きい人だったら辞めてもらう方向でいいと思うのですが、「助成金を受ける」って事を考えると、いったん冷静になったほうがいいですね。どうしてかというと、
「退職勧奨や解雇をした会社は、半年から1年は支給申請できない」
なんてルールがあるんです。キャリアアップ助成金とか、キャリア形成助成金、特開金などの「厚労省の助成金」はほとんどそうなってます。ですので、
・従業員を残す事で会社にもたらす損害
(周りのスタッフへの影響、顧客への影響など)
・従業員を解雇(退職勧奨)する事で受けられない助成金
(金額)
を冷静に比較して決める必要があります。一時の感情で動くと良いことはありません。
たとえば、アナタの会社に、下記のような従業員イズミくんがいるとしましょう。(なんか自分の事みたいでちょっとイヤですが(笑))
< 従業員イズミくんのプロフィール >
・25歳
・男性
・雇用形態:正社員
・勤続:2年目
・勤務態度:やる気が感じられない(「向上心はない」と本人も言っている)
・能力:入社してからほとんど上がっていない
・勤怠:特に問題なし(欠勤、遅刻、早退はほとんどない)
で、アナタは日頃から、イズミ君に早く会社を辞めてほしいと思っているとします。そんななか、イズミ君が5月16日に「7月末に辞めたいんです」という意思表示をしてきました。そしてアナタは『6月末に、自己都合という事で辞めてもらえるように出来ないか?」と考えました。
じゃあそんな事が出来るのか?というと、それは話の進め方によります。しっかりと話し合って、最終的に「だったら6月末に辞めたいです」となれば「自己都合」になります(証明するために「一身上の都合による退職願」を必ず提出させてください。その退職願がないと、後でハローワークに「退職勧奨を受けた」なんて言われないか心配です)。
逆にアナタが「6月末に辞めてもらえると助かるんだけど」なんて言ったら、それはまさしく「退職勧奨」です。それで辞めさせる事は出来るかもしれませんが、離職理由は「会社都合」となり、助成金の支給に支障をきたします。労働者からしたら「会社都合のほうが失業手当を早くもらえる」というメリットがあるので、労働者は退職勧奨のほうが有り難いのです。次の仕事先が決まっていない人だったら、退職勧奨ウエルカムです。会社としては退職勧奨で永久に助成金がもらえなくなるわけじゃないですが、しばらくもらえなくなります。
ちょっと労働基準法的な話をすると、このイズミ君のプロフィールだと「解雇」まではムリでしょうね。やる気がないとは言え、暴力をふるったり、大きな損害を出しているわけじゃありませんから、解雇事由にあたりません。勤怠面も特に問題ないようですし。あくまで「辞めてくれ」→「分かりました」の退職勧奨が限界。もし解雇なんかして、不当解雇で訴えられたら100%会社の負けでしょう。
で、結局、「イズミ君の自己都合で6月末に退職」となるには、アナタの態度がとても重要です。まずはイズミ君の話や、「なぜ7月末に辞めたいと思ったのか」をしっかり聞いてください。もしかしたら、本人も今すぐ会社を辞めたいと思っているかもしれません。
・労働者は今すぐ辞めたい
・会社も今すぐ辞めてほしい
・すぐに辞めても業務に支障はない
なら、会社にいてもらう必要は全くありません。その日のうちに退職してもらって、自己都合で円満退職です。
と、このように、話の進め方で結果が全く違ってきます。お互いに最良の結果にするために、本人と話し合う前は事前にシミュレーションしておく事をオススメします。